「リラックスしよう」とするほど緊張してしまうのはなぜ?|力を抜こうと頑張る前に、気づきたいこと

「緊張しないようにしよう」

「もっとリラックスしなきゃ」

「肩の力を抜いて、落ち着いて話そう」

人前で話すときや、大切な場面を迎えるとき、そんなふうに考えることはありませんか?

緊張したくないと思うのは、自然なことです。

できれば落ち着いて話したいし、身体の余計な力を抜いて、普段どおりに振る舞いたいですよね。

ところが、不思議なことに、リラックスしようと頑張るほど、かえって緊張してしまうことがあります。

「肩の力を抜こう」と意識するほど、肩が気になる。

「呼吸を整えよう」とするほど、呼吸がぎこちなくなる。

「緊張してはいけない」と思うほど、自分が緊張していることばかり気になってしまう。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

その理由を考えるとき、緊張をなくす方法だけではなく、緊張をなくそうとしているとき、自分が何をしているのかという視点も役立ちます。

この記事では、力を抜こうと頑張ることから少し離れ、自分の身体の使い方を観察する方法をご紹介します。

第1章 「リラックスしなきゃ」と思うと、なぜ緊張するの?

1.1 緊張をなくすことが、新しい課題になる

例えば、人前で発表する場面を想像してみてください。

発表が始まる前から、身体が少しこわばっているとします。

そこで、

「緊張しないようにしよう」

と考えます。

すると、今度は自分が緊張していないかどうかが気になり始めます。

「まだ肩が固いな」

「呼吸が浅いかもしれない」

「心臓がドキドキしている」

「このままでは、うまく話せないかもしれない」

そして、緊張している自分を何とか変えようとします。

しかし、その結果、発表の内容よりも、自分の身体や気持ちの状態に注意が向き続けてしまうことがあります。

本来は発表の準備をしたいのに、いつの間にか「緊張をなくすこと」がもう一つの課題になっているのです。

1.2 「緊張してはいけない」と思うほど、緊張が気になる

人は、何かを避けようとすると、その対象に注意を向けやすくなることがあります。

例えば、「緊張してはいけない」と考えていると、緊張していないかどうかを何度も確認してしまうことがあります。

「声が震えていないかな」

「肩に力が入っていないかな」

「落ち着いているように見えるかな」

こうした確認が続くと、緊張に関する情報ばかりが目に入りやすくなります。

心理学では、思考や感情をコントロールしようとする過程で、かえって避けたい対象が意識に浮かびやすくなる現象が研究されています。[1]

もちろん、緊張をなくそうとすれば必ず緊張が強くなるわけではありません。

ただ、緊張をなくすことに意識が集中しすぎると、緊張そのものが気になり続ける場合があるのです。

第2章 「力を抜く」ことを頑張っていませんか?

2.1 肩の力を抜こうとして、肩ばかり気になる

身体の力みが気になるとき、よく使われる言葉があります。

「肩の力を抜いて」

「身体をリラックスさせて」

「もっと自然に動いて」

どれも、よく耳にする言葉です。

しかし、実際に肩の力を抜こうとすると、どうでしょうか。

肩を下げようとする。

肩が下がっているか確認する。

まだ力が入っている気がするので、さらに肩を下げる。

このように、肩を何とかしようとすること自体が、新しい努力になっている場合があります。

本来、肩の力を抜きたいと思っただけなのに、肩を意識的に操作し続けることになってしまうのです。

2.2 力を抜くことと、力を入れないように頑張ることは違う

ここで、一つ考えてみてください。

「力を抜くこと」と「力を入れないように頑張ること」は、本当に同じでしょうか。

例えば、首に力が入っていると気づいたとします。

そこで、すぐに首を柔らかくしようとする。

肩を下げようとする。

背中を緩めようとする。

こうした行動が、必ずしも悪いわけではありません。

ただ、身体を変えようとする努力が増えすぎると、かえって自分の動きを制限してしまうこともあります。

大切なのは、身体の力をすべて抜こうとすることではありません。

自分がどこで、どのように力を使っているのかに気づくこと。

そこから始めてみましょう。

第3章 実際に試してみよう。「力を抜く」と「気づく」の違い

ここで、簡単な体験をしてみましょう。

3.1 まず、肩の力を抜こうとしてみる

椅子に座って、普段どおりの姿勢をとってください。

そして、肩に少し注意を向けます。

もし肩がこわばっているように感じたら、

「肩の力を抜こう」

と考えてみてください。

肩を下げる。

肩を緩める。

リラックスさせようとする。

そのとき、どんな感覚があるでしょうか。

肩が楽になったかもしれません。

反対に、肩のことばかり気になったかもしれません。

どちらでも構いません。

3.2 今度は、何も直さずに観察する

次に、肩を変えようとするのをいったんやめてみます。

肩を下げようとしません。

力を抜こうともしません。

ただ、肩が今どのような状態にあるのかに気づいてみてください。

肩が少し上がっている。

首のあたりが固い。

左右で感覚が違う。

特に気になることはない。

どんな発見でも構いません。

そして、呼吸を変えたり、姿勢を整えたりせず、そのまま少し座ってみます。

どうでしょうか。

先ほどとは、注意の向け方が違っていませんか?

最初は「肩を何とかしよう」としていました。

今は「肩がどうなっているかを知ろう」としています。

この違いが、今回の大切なポイントです。

3.3 すぐに変化しなくても大丈夫

観察したからといって、必ず肩が楽になるわけではありません。

身体の感覚が変わらないこともあります。

むしろ、普段は意識していなかった緊張に気づき、以前より肩が固く感じられることもあるでしょう。

それでも問題ありません。

ここでの目的は、肩を柔らかくすることではなく、自分の身体の状態に気づくことだからです。

気づくことと、すぐに改善することは別です。

無理に結果を出そうとせず、まずは自分が何をしているのかを知ることから始めてみましょう。

第4章 呼吸を整えようとすると、かえって苦しくなることも

4.1 「深呼吸しなきゃ」と頑張っていませんか?

緊張したとき、深呼吸をする人は多いでしょう。

ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐く。

こうした呼吸法が役立つ人もいます。

ただし、深呼吸をすれば誰でも必ずリラックスできるわけではありません。

「しっかり息を吸わなきゃ」

「もっと長く吐かなきゃ」

「呼吸を整えなきゃ」

と頑張ることで、かえって呼吸の仕方が気になってしまう場合もあります。

例えば、息を吸うたびに肩を持ち上げたり、胸を大きく広げようとしたり、吐く息を無理に長くしようとしたりすることがあります。

その結果、呼吸を自然に続けることよりも、呼吸をコントロールすることに意識が集中してしまうかもしれません。

4.2 呼吸を変える前に、今の呼吸に気づく

そんなときは、一度、呼吸を何とかしようとするのをやめてみましょう。

大きく吸おうとしません。

ゆっくり吐こうともしません。

ただ、今、自分がどのように呼吸しているのかに気づいてみます。

息が入ってくる。

息が出ていく。

胸やお腹が動いている。

肩や首がどのように動いているか。

そんなことを、無理なく観察してみてください。

呼吸を意識的に変えなくても、呼吸が続いていることに気づけます。

もちろん、必要に応じて呼吸法を練習することが役立つ場合もあります。

ここで伝えたいのは、呼吸をコントロールする方法だけでなく、呼吸をしている自分全体に気づくという選択肢もあるということです。

第5章 緊張をなくさなくても、できることがある

5.1 緊張していることと、身体を固めていることを分けて考える

人前で話すとき、緊張すること自体は珍しいことではありません。

大切な場面で心臓がドキドキしたり、少し不安になったりすることもあります。

しかし、緊張を感じていることと、身体を必要以上に固めていることは、分けて考えられます。

緊張していても、首や肩の状態に気づくことはできます。

緊張していても、呼吸を無理に操作しないという選択はできます。

緊張していても、目の前の相手や話す内容に注意を向け直すことはできます。

緊張を完全になくすことだけを目標にしなくてもよいのです。

5.2 「落ち着かなきゃ」から「今、何をしている?」へ

例えば、発表の直前に緊張していると気づいたとします。

いつもの反応なら、

「落ち着かなきゃ」

「肩の力を抜かなきゃ」

「深呼吸しなきゃ」

と考えるかもしれません。

今度は、少し違う問いを持ってみてください。

「私は今、何をしているんだろう?」

肩を持ち上げているだろうか。

首を固めているだろうか。

息を止めているだろうか。

失敗しないように、身体全体を固めているだろうか。

こうしたことに気づいても、すぐに直そうとする必要はありません。

まずは、自分の反応を知ること。

そして、いつもの反応に気づいたうえで、別の選択肢があるかもしれないと考えてみること。

それが、新しい習慣を学ぶ出発点になります。

第6章 アレクサンダーテクニークから考える「力を抜く」ということ

6.1 身体を変えようとする前に、自分の使い方を見る

アレクサンダーテクニークでは、単に身体の力を抜いたり、正しい姿勢を作ったりすることだけを目指すわけではありません。

立つ、座る、歩く、話すといった日常の活動の中で、自分がどのように身体を使っているのかに気づいていきます。

例えば、緊張すると首を固める習慣があるとします。

そのとき、「首の力を抜かなきゃ」と頑張るのではなく、まずは首を固めていることに気づきます。

そして、いつもの反応にすぐ従うのではなく、ほかの使い方を選べる可能性を探していきます。

これは、身体を無理に操作することとは少し違います。

自分の習慣を知り、その習慣に自動的に従うことをいったん保留してみる。

そのうえで、身体全体を使って活動する可能性を探っていくのです。

6.2 リラックスできることだけが、目標ではない

アレクサンダーテクニークのレッスンを受ければ、いつでもリラックスできるようになるのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。

緊張する場面で緊張を感じることもありますし、身体の使い方に気づいたからといって、すぐに声や動きが変わるとは限りません。

音楽家を対象としたアレクサンダーテクニークの研究をまとめた系統的レビューでは、演奏不安の軽減を示す研究が報告されています。一方、演奏パフォーマンスや呼吸機能、姿勢などについては、結果が一貫しておらず、確かな結論には至っていません。[2]

そのため、アレクサンダーテクニークを「緊張を必ずなくす方法」と捉えるのは適切ではありません。

むしろ、緊張をなくそうとする自分の習慣に気づき、活動中の身体の使い方を学ぶ機会として考えることができます。

リラックスできるかどうかだけでなく、自分がどのように身体を使っているのかを知ること。

それも大切な学びの一つです。

第7章 「もっと頑張る」以外の選択肢を持つ

緊張したとき、私たちは何とかして状況を改善しようとします。

緊張しないようにする。

力を抜く。

深呼吸する。

姿勢を整える。

もちろん、こうした方法が役立つ場合もあります。

ただ、いつもそれらを頑張らなければならないとしたら、少し疲れてしまうかもしれません。

そんなときは、一度立ち止まってみましょう。

「私は今、何をしようとしているんだろう?」

「身体を変えようとすることに、意識が集中しすぎていないだろうか?」

「今の自分の状態を、ただ観察してみたらどうだろう?」

すぐに緊張が消えなくても構いません。

身体が楽にならなくても構いません。

まずは、自分が何をしているのかに気づくこと。

そこから、今までとは違った選択肢が見えてくることがあります。

アレクサンダーテクニークのレッスンでは、こうした身体の使い方を、実際に立つ、座る、歩く、話すといった活動を通して観察していきます。

「リラックスしなきゃ」と頑張ることに疲れてしまった方は、力を抜く方法を探すだけでなく、普段の自分の使い方に目を向けてみませんか。

免責事項

この記事は、緊張や身体の使い方について一般的な情報を提供するものであり、医学的な診断や治療を行うものではありません。

緊張や不安が強く、日常生活に大きな支障が生じている場合は、医療機関や専門家への相談もご検討ください。

また、アレクサンダーテクニークが緊張や不安を治療・解消することを保証するものではありません。

参考文献

  1. Wegner DM. Ironic processes of mental control. Psychological Review. 1994;101(1):34–52.
  2. Klein SD, Bayard C, Wolf U. The Alexander Technique and musicians: a systematic review of controlled trials. BMC Complementary and Alternative Medicine. 2014;14:414.
ブログ

BLOG

PAGE TOP