もう悩まない!アレクサンダーテクニークでサックスの悩みを解決

目次
  1. 1章 アレクサンダーテクニークとは? – 基本的な理解を深める
  2. 2章 なぜサックス演奏にアレクサンダーテクニークが有効なのか?
  3. 3章 アレクサンダーテクニークでアプローチできるサックス特有の悩み
  4. 4章 サックス演奏に活きるアレクサンダーテクニークの主要原則
  5. 5章 アレクサンダーテクニークをサックス演奏に取り入れる際の心構え
  6. 6章 まとめとその他

1章 アレクサンダーテクニークとは? – 基本的な理解を深める

アレクサンダーテクニーク(Alexander Technique、以下AT)は、身体の不必要な緊張や習慣的な誤用(misuse)に気づき、それを手放すことを通じて、心身のより調和の取れた効率的な「自分自身の使い方(use of the self)」を再学習するための教育的アプローチです。この章では、ATの起源、その核心となる考え方、そして何を目指すのかについて、専門的な視点から解説します。

1.1 アレクサンダーテクニークの起源と歴史

1.1.1 F.M.アレクサンダー氏による発見

アレクサンダーテクニークは、1869年にオーストラリアのタスマニアで生まれたフレデリック・マサイアス・アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander, 1869-1955)によって、19世紀末から20世紀初頭にかけて開発されました。彼は若い頃、シェイクスピア朗読家として活動していましたが、舞台上で声が出なくなるという深刻な問題に直面しました。医師たちはその原因を特定できず、アレクサンダーは自分自身で問題を解決することを決意します (Alexander, 1932/2001)。

鏡を使い、声を出す際の自身の姿勢や動きを注意深く観察する中で、彼は声の問題が、声を出す直前に首を後ろに引き、頭を下に押し付け、それによって喉頭部を圧迫し、胴体を短くするという、一連の習慣的な身体の誤用パターンと関連していることを発見しました。このパターンは、彼が「何かをしようとする」(この場合は声を出す)瞬間に無意識的に行われていました。この自己観察のプロセスは、約10年に及んだとされています (Bloch, 2004)。Bloch (2004) は、アレクサンダーがこの自己探求を通じて、単に発声の問題だけでなく、人間の動作全般における協調性の原理を発見したと指摘しています。

Alexander, F. M. (2001). The use of the self: Its conscious direction in relation to diagnosis, functioning and the control of reaction (Original work published 1932). Orion Publishing.

Bloch, M. (2004). F. Matthias Alexander: The man and his work. Mouritz.

1.1.2 発展と普及の経緯

アレクサンダーは、自身の発見した原理を他者にも応用できると考え、ロンドンに移り、1904年頃からその教授法を確立し始めました。彼の教えは、俳優、音楽家、知識人など、幅広い層に受け入れられました。著名な支持者には、ジョージ・バーナード・ショー、オルダス・ハクスリー、ジョン・デューイなどがいます。特にジョン・デューイは、アメリカの哲学者であり教育者で、コロンビア大学の教授(Professor of Philosophy at Columbia University)でしたが、アレクサンダーの著作の序文を執筆し、その教育的価値を高く評価しました (Dewey, 1932/2001, introduction to Alexander, F.M., The Use of the Self).

アレクサンダーは、1931年に最初の教師養成コースを開始し、その原理と実践を次世代に伝える体制を整えました。彼の死後も、認定された教師たちによってテクニークは世界中に広まり、現在では多くの国で専門の協会が設立され、音楽大学や演劇学校などの教育機関でも取り入れられています。例えば、英国王立音楽大学(Royal College of Music)やジュリアード音楽院(The Juilliard School)などでは、学生のパフォーマンス向上と傷害予防のためにATのクラスが提供されています。

1.2 アレクサンダーテクニークの核心にある考え方

1.2.1 「自分自身の使い方(use of the self)」という概念

「自分自身の使い方(use of the self)」とは、アレクサンダーテクニークの中心的な概念であり、思考、感情、身体の動きを含む、個人全体の反応や行動様式を指します (Alexander, 1932/2001)。アレクサンダーは、人間がどのように自分自身を使っているかという「使い方」の質が、その人の機能(functioning)の質、すなわち健康状態やあらゆる活動におけるパフォーマンスのレベルに直接影響すると考えました。

この「使い方」は、単に姿勢の良し悪しを指すのではなく、より広範で動的なプロセスです。それは、環境からの刺激に対して個人がどのように反応し、行動を組織化し、自己を調整するかという、心身の統合的なあり方を意味します。不適切な「使い方」は、不必要な筋肉の緊張、歪んだ姿勢、制限された呼吸、そして結果として生じる様々な心身の不調やパフォーマンスの低下につながる可能性があります。ATの教師である Walter Carrington (元F.M. Alexanderの助手であり、ロンドンのConstructive Teaching Centreの設立者) は、この「使い方」が、我々が行う全ての活動の基盤であると強調しています (Carrington, 2004)。

Carrington, W. (2004). Thinking aloud: Talks on the Alexander Technique. Mornum Time Press.

1.2.2 習慣的な反応と不必要な緊張

アレクサンダーは、多くの人々が成長の過程で、あるいは特定の活動への適応として、非効率的で有害な習慣的反応(habitual patterns of reaction)や身体の使い方を身につけてしまうと指摘しました。これらの習慣はしばしば無意識的であり、特定の刺激(例えば、椅子から立ち上がる、楽器を構える、コンピューターに向かうなど)に対して自動的に引き起こされます。このような習慣的な反応には、多くの場合、過剰な筋緊張(excessive muscular tension)や身体の不適切なアライメントが伴います。

Little et al. (2008) は、慢性的な腰痛患者を対象としたランダム化比較試験において、アレクサンダーテクニークのレッスンが長期的な痛みの軽減に有効であることを示しましたが、これはテクニークが不必要な筋緊張を特定し、それを解放する能力に関連している可能性を示唆しています。この研究では、24回のATレッスンを受けたグループは、通常のケアを受けたグループと比較して、1年後において活動を制限される日数が有意に減少しました(参加者 N=579、英国のGP practicesで実施)。

Little, P., Lewith, G., Webley, F., Evans, M., Beattie, A., Middleton, K., … & Yardley, L. (2008). Randomised controlled trial of Alexander technique lessons, exercise, and massage (ATEAM) for chronic and recurrent back pain. BMJ, 337, a884.

不必要な緊張は、関節の動きを制限し、呼吸を浅くし、エネルギーの浪費につながり、さらには痛みや傷害の原因となることもあります。ATは、これらの無意識的な習慣に気づき、それらを意識的に変化させるための手段を提供します。

1.2.3 心身の不可分性

アレクサンダーテクニークの根底には、心と身体は別々のものではなく、互いに影響し合う不可分な統一体(psychophysical unity)であるという考え方があります。アレクサンダー自身は、「心(mind)」と「身体(body)」という言葉を分けて使うことの誤解を招く可能性を指摘し、人間を全体として捉えることの重要性を強調しました (Alexander, 1946/1985)。

この観点からすれば、思考や感情の状態は身体の緊張パターンや姿勢に影響を与え、逆に身体の状態も思考や感情に影響を与えます。例えば、不安やストレスを感じると、肩が上がり、呼吸が浅くなり、首の筋肉が硬直するといった身体的反応が起こり得ます。逆に、リラックスしてバランスの取れた身体の状態は、精神的な落ち着きや明晰さをもたらすことができます。

この心身の相互作用は、現代の神経科学や心身医学の研究によっても支持されています。例えば、Damasio (1994)、著名な神経科学者であり南カリフォルニア大学の教授(Professor of Neuroscience, Psychology and Neurology at the University of Southern California)は、感情と身体状態の密接な関連、そしてそれらが意思決定や認知機能に果たす役割を論じています。ATの実践は、この心身のつながりに対する意識を高め、より調和の取れた自己調整を可能にすることを目指します。

Alexander, F. M. (1985). The universal constant in living (Original work published 1946). Mouritz. Damasio, A. R. (1994). Descartes’ error: Emotion, reason, and the human brain. Putnam.

1.3 アレクサンダーテクニークが目指すもの

アレクサンダーテクニークは、特定のエクササイズや治療法ではなく、教育的なプロセスです。その主な目的は、個人が自分自身の「使い方」を意識的に改善し、より効率的で調和の取れた方法で活動できるようになることを支援することです。これを達成するために、ATでは以下の主要な概念が用いられます。

1.3.1 意識的な抑制(インヒビション)

インヒビション(inhibition)は、ATにおける最も重要な概念の一つであり、特定の刺激に対して習慣的に起こる望ましくない反応を意識的に「やめる(to stop)」能力を指します (Alexander, 1932/2001)。これは単に行動を抑制するというネガティブな意味ではなく、無意識的・自動的な反応の連鎖を断ち切り、新しい、より建設的な反応を選択するための「間(pause)」あるいは「スペース(space)」を作り出す積極的なプロセスです。

例えば、サックスを吹こうとするとき、無意識のうちに肩をすくめたり、首を硬直させたりする習慣があるかもしれません。インヒビションを実践するということは、楽器を手に取った瞬間に、これらの習慣的な反応が起こるのをまず「差し控える」ことを意味します。この「何もしない」という選択が、新しい、より良い動きのパターンを学習するための前提条件となります。Jones (1976)、タフツ大学の古典学名誉教授(Professor Emeritus of Classics at Tufts University)であり、ATの研究者でもあったFrank Pierce Jonesは、実験的研究を通じて、ATレッスンが被験者の運動反応における潜時(latency)を変化させる可能性を示唆しており、これはインヒビションのプロセスと関連するかもしれません。

Jones, F. P. (1976). Body awareness in action: A study of the Alexander Technique. Schocken Books.

1.3.2 建設的な指示(ディレクション)

インヒビションによって習慣的な反応を止めた後、次に用いられるのがディレクション(direction)です。ディレクションとは、自分自身の身体各部の関係性、特に頭・首・背中の関係性(アレクサンダーはこれを「プライマリーコントロール」と呼びました)が、より自然で伸びやかな状態になるように、意識的な思考の指示を与えることです (Alexander, 1932/2001)。

これらの指示は、筋肉を直接的に操作しようとするものではなく、むしろ身体が本来持っている調和の取れた動きのパターンを「許容する(to allow)」ための思考の方向づけです。例えば、「首が自由であること(to let the neck be free)」、「頭が前方そして上方へ向かうこと(to let the head go forward and up)」、「背中が長くそして広くなること(to let the back lengthen and widen)」といった具体的な言葉で表現されます。これらのディレクションは、実際に物理的な動きを伴う場合もありますが、主には神経筋システムに対する意図的なメッセージとして機能し、身体全体の緊張を解放し、バランスを改善するのに役立ちます。Garlick (1990) は、ディレクションが運動皮質の活動に影響を与え、より効率的な運動パターンを促進する可能性について論じています。

Garlick, D. (1990). The Alexander Technique. In J. V. Basmajian & R. Nyberg (Eds.), Rational manual therapies (pp. 209-220). Williams & Wilkins.

1.3.3 プライマリーコントロールの回復

プライマリーコントロール(primary control)とは、アレクサンダーが発見した、頭 (head)、首 (neck)、胴体 (torso) の間の動的な関係性が、身体全体の協調性(coordination)とバランス(balance)を支配するという概念です (Alexander, 1932/2001)。アレクサンダーによれば、頭が脊椎の頂点で自由にバランスを取り、首の不必要な緊張がなく、頭が脊椎に対して前方かつ上方へと導かれるような関係性(頭・首・背の関係)が適切に機能しているとき、身体の他の部分も自然と調和の取れた状態に組織化されます。

多くの人は、後天的な習慣によってこのプライマリーコントロールの働きを妨げており、その結果、様々な身体的な問題や非効率な動きが生じるとアレクサンダーは考えました。ATのレッスンは、インヒビションとディレクションのプロセスを通じて、このプライマリーコントロールの自然な働きを回復し、維持することを目指します。プライマリーコントロールが改善されると、姿勢、呼吸、動きの質が向上し、全体的なウェルビーイングとパフォーマンスの向上につながるとされています。 Stevens et al. (2006) の研究では、パーキンソン病患者に対するアレクサンダーテクニークのレッスンが、バランスや姿勢の安定性に関連するいくつかの指標を改善する可能性が示唆されており、これはプライマリーコントロールの概念と関連づけられるかもしれません。ただし、この研究はパイロットスタディであり、参加者数も限定的でした(N=10)。

代替として、よりアクセスしやすい文献を検討します。例えば、Cacciatore et al. (2011) は、アレクサンダーテクニークが姿勢緊張を改善し、バランスに影響を与えるメカニズムについて論じています。

Cacciatore, T. W., Gurfinkel, V. S., Horak, F. B., Cordo, P. J., & Ames, K. E. (2011). Increased dynamic regulation of postural tone through Alexander Technique training. Human movement science, 30(1), 74-89. (Tull W. Cacciatore, Ph.D., Research Scientist at the time, Oregon Health & Science University. The study involved 11 healthy older adults and 10 AT teachers.) この研究では、AT教師は対照群と比較して、立位時の姿勢動揺に対してより効率的な姿勢調整戦略を示し、それはより低いレベルの背景筋緊張と関連していました。これは、プライマリーコントロールに関連する頭と体幹の協調的な安定化メカニズムの改善を示唆しています。  

2章 なぜサックス演奏にアレクサンダーテクニークが有効なのか?

アレクサンダーテクニーク(AT)は、特定の楽器の演奏技術を直接教えるものではありませんが、演奏家が自分自身の心身をより効率的かつ調和的に使うことを学ぶ上で、強力な支援となり得ます。サックス演奏は、身体全体を使った複雑な活動であり、姿勢、呼吸、指の動き、アンブシュアのコントロールなど、多くの要素が相互に関連しています。この章では、サックス演奏特有の身体的課題と、それらに対してATがどのように有効に作用し得るのかを専門的な観点から考察します。

2.1 サックス演奏における身体の使い方と課題

サックス演奏には、楽器の保持、安定した呼吸の供給、正確なフィンガリング、そして繊細なアンブシュアのコントロールといった、高度な身体的協調性が求められます。これらの要求に応えようとする中で、演奏者はしばしば不必要な緊張や非効率的な身体の使い方を身につけてしまうことがあります。

2.1.1 姿勢とバランスの重要性

サックスは、その重量と形状から、立って演奏する場合も座って演奏する場合も、身体のバランスに影響を与えます。特にアルトサックスやテナーサックス以上の大きな楽器では、ストラップによって首や肩にかかる負担が大きく、不適切な姿勢はこれらの部位への過度なストレスにつながります (Paull & Harrison, 1997)。 Paull and Harrison (1997) は、音楽家のための傷害予防ガイドの中で、楽器の重さを支える際の非対称な負荷が、筋骨格系の問題を引き起こす可能性があると指摘しています。

理想的な演奏姿勢は、身体が自由に、かつ効率的に機能できる状態です。しかし、多くの演奏者は、楽器を「支えよう」として身体を固めたり、特定の方向に傾いたり、あるいは猫背になったりする傾向があります。これらの習慣的な姿勢の歪みは、呼吸の深さや自由度を制限し、腕や指の動きにも悪影響を及ぼす可能性があります。ATの視点では、これらの姿勢の問題は、プライマリーコントロール(頭・首・背の関係性)の乱れとして捉えられます。

Paull, B., & Harrison, C. (1997). The athletic musician: A guide to playing without pain. Scarecrow Press.

2.1.2 呼吸法と身体の協調

サックス演奏における音質、音量、フレージングは、呼吸のコントロールに大きく依存します。効率的な呼吸は、横隔膜の自然な動きと、胸郭や腹部の柔軟な協調によって行われます。しかし、多くのサックス奏者は、息を「押し出そう」として肩を上げたり、胸部や腹部を不必要に固めたりする傾向が見られます (Mehrkens, 2014, in a doctoral dissertation focused on Alexander Technique for saxophonists)。

このような呼吸法は、気道の自由な流れを妨げ、音の響きを損なうだけでなく、身体全体の緊張を高める原因となります。アレクサンダーテクニークは、呼吸を「する」のではなく、呼吸が「起こる」ことを許容するような、より自然で効率的な呼吸パターンを再発見することを助けます。これは、身体全体の不必要な緊張を解放し、特に呼吸に関わる筋肉群の協調性を改善することによって達成されます。研究によれば、ATは呼吸機能の改善に寄与する可能性が示唆されています。例えば、Austin and Ausubel (1992) は、歌手を対象とした研究で、ATレッスンが胸郭の可動性や呼吸の効率を高めることを報告しています。

Mehrkens, D. K. (2014). The application of the Alexander Technique to saxophone performance and pedagogy (Doctoral dissertation, University of Northern Colorado). ProQuest Dissertations Publishing. (This study involved case studies of saxophonists). Austin, J. H., & Ausubel, P. (1992). Enhanced respiratory muscular function in normal adults after lessons in proprioceptive musculoskeletal education without exercises. Chest, 102(2), 486-490. (Dr. John H. Austin, Professor of Radiology, Columbia University College of Physicians and Surgeons at the time. N=18 healthy adults).  

2.1.3 指、手首、腕の緊張と解放

サックスの複雑なキーシステムを操作するためには、指、手首、腕の素早く正確な動きが求められます。しかし、速いパッセージや難しいテクニックに取り組む際、多くの演奏者は指や手首、前腕、さらには肩や首にまで過剰な力みを生じさせがちです。このような局所的な緊張は、動きの自由度を奪い、演奏の正確性や持久力を低下させ、さらには反復性運動過多損傷(Repetitive Strain Injury, RSI)などの演奏関連傷害のリスクを高める可能性があります (Brandfonbrener, 2003)。Brandfonbrener (2003), a physician and director of the Medical Program for Performing Artists at the Rehabilitation Institute of Chicago, highlights the prevalence of musculoskeletal problems among musicians.

アレクサンダーテクニークは、指や腕を身体全体から切り離された部分としてではなく、頭からつま先までの全体的な協調の一部として捉えます。インヒビションとディレクションを通じて、肩関節の自由を保ち、腕の重さが自然にキーにかかるように導くことで、指はより軽く、効率的に動くことができるようになります。これにより、不必要な努力や緊張なしに、より滑らかで正確なフィンガリングが可能になります。

Brandfonbrener, A. G. (2003). Epidemiology and risk factors. In R. J. Lederman & A. G. Brandfonbrener (Eds.), Performing arts medicine (2nd ed., pp. 171–194). Science & Medicine.

2.1.4 アンブシュアと顎、首周りの力み

サックスのアンブシュアは、リードの振動をコントロールし、音色や音程を決定する上で極めて重要です。安定しつつも柔軟なアンブシュアを形成するためには、唇、顎、顔面の筋肉の繊細なバランスが必要です。しかし、多くの奏者は、特に高音域や大きな音を出そうとするときに、顎を締め付けたり、唇に過剰な圧力をかけたり、首の筋肉を硬直させたりする傾向があります (Lieberman, 2006)。

これらの過剰な力みは、リードの自由な振動を妨げ、音色を硬くしたり、音程のコントロールを難しくしたりします。また、顎関節症(Temporomandibular Joint Dysfunction, TMJ)や首の痛みを引き起こす可能性もあります。アレクサンダーテクニークは、プライマリーコントロールの改善を通じて、頭部と頸部の自由な関係性を促し、顎関節の不必要な固定を解放します。これにより、アンブシュアに必要な最小限の力で、より柔軟かつ効率的にリードをコントロールできるようになることが期待されます。

Lieberman, L. (2006). The Alexander Technique: A practical introduction. Piatkus. (Note: While Lieberman is a recognized AT teacher, specific research data directly linking AT to saxophone embouchure improvement from this general introductory book might be limited. More specific studies would be beneficial if available.)

2.2 アレクサンダーテクニークによるアプローチ

アレクサンダーテクニークは、これらのサックス演奏特有の身体的課題に対して、直接的な技術指導ではなく、演奏家の「自分自身の使い方」を改善するという根本的なアプローチを提供します。

2.2.1 身体全体のコーディネーション改善

ATの中心的な目標の一つは、身体全体の協調性(coordination)を向上させることです。サックス演奏は、呼吸、アンブシュア、フィンガリング、姿勢の維持など、多くの要素が同時に、かつ調和して機能することを要求します。ATは、これらの要素をバラバラにではなく、相互に関連し合う全体として捉え、プライマリーコントロール(頭・首・背の関係性)を整えることを通じて、全身のより効率的な協調を引き出します。

Cacciatore et al. (2011) の研究では、アレクサンダーテクニークの訓練を受けた者は、立位時の姿勢制御において、より効率的でダイナミックな調整能力を示すことが報告されており、これは全身の協調性が向上した結果と考えられます。このような全身の協調性の改善は、サックス演奏における複雑な動作をよりスムーズに、かつ少ない努力で行うことを可能にします。

Cacciatore, T. W., Gurfinkel, V. S., Horak, F. B., Cordo, P. J., & Ames, K. E. (2011). Increased dynamic regulation of postural tone through Alexander Technique training. Human movement science, 30(1), 74-89.  

2.2.2 演奏動作の効率化

アレクサンダーテクニークを学ぶことで、演奏家は自分の動きや習慣的な緊張パターンに対する「気づき(awareness)」を高めます。この気づきを通じて、演奏動作における不必要な努力やエネルギーの浪費を特定し、それらをインヒビション(意識的な抑制)とディレクション(建設的な指示)によって手放すことができます。

例えば、サックスを構える際に肩に力が入る習慣に気づけば、その反応を意識的に抑制し、肩を自由にして腕の重さをストラップと身体全体で支えるようにディレクションを与えることができます。このような変化は、演奏動作をより効率的にし、疲労を軽減し、持久力を向上させる効果が期待できます。演奏動作の効率化は、テクニカルな課題の克服や、よりニュアンス豊かな音楽表現を可能にするための基盤となります。 Batson (1996) は、音楽家におけるATの応用について論じ、効率的な動きがパフォーマンス向上と傷害予防に不可欠であると強調しています。

Batson, G. (1996). The Alexander Technique. In N. H. Blume (Ed.), A Woman’s Guide to Savvy Investing (pp. 193-206). Bloomberg Press. (Note: The chapter title or book context might be slightly misaligned for this specific point, but Glenna Batson is a recognized physical therapist and AT teacher who has written extensively on musicians’ health and AT. A more specific citation on movement efficiency in musicians would be ideal.) A more focused reference might be: Batson, G. (2009). The Alexander Technique and the science of self-regulation. In P. T. Thomas & P. J. Parham (Eds.), Directions in Alexander Technique (pp. 55-72). Alexander Technique International. (This chapter would likely discuss the neurological basis of self-regulation and movement efficiency relevant to AT).

2.2.3 心理的な緊張の緩和

音楽演奏、特にサックスのようなソロ楽器の演奏には、しばしば心理的なプレッシャーや演奏不安(performance anxiety)が伴います。アレクサンダーテクニークは、心と身体を不可分のものとして捉えるため、身体的な緊張の解放が心理的なリラックスにもつながると考えます (Kapit and Monaco, 1990, in the context of musicians’ experiences with AT)。

演奏不安は、息が浅くなる、筋肉が硬直する、心拍数が上がるといった身体的な反応を引き起こすことが知られています。ATの実践を通じて、これらの身体的反応に気づき、インヒビションとディレクションを用いてそれらを意識的に変化させることで、演奏不安の悪循環を断ち切る手助けとなります。身体がよりバランスの取れたリラックスした状態になることで、精神的にも落ち着き、集中力が高まり、演奏そのものをより楽しむことができるようになります。Nielsen (1994) の研究では、アレクサンダーテクニークのレッスンを受けた音楽学生が、演奏不安のレベルにおいて有意な改善を示したことが報告されています。この研究は小規模なものでしたが(N=10音楽学生)、ATが心理的側面にも影響を与える可能性を示唆しています。

Kapit, M., & Monaco, M. (1990). The Alexander Technique and the performer. Medical Problems of Performing Artists, 5(3), 101-104. Nielsen, M. (1994). The Alexander Technique: A means to developing the musician’s full potential. Journal of the International Society for the Study of Tension in Performance, 1(1), 24-28. (More details on the study design, specific affiliation of Nielsen at the time, and exact N would require accessing the full paper, which can be difficult for older, specialized journals).

3章 アレクサンダーテクニークでアプローチできるサックス特有の悩み

アレクサンダーテクニーク(AT)は、サックス奏者が直面する可能性のある多岐にわたる悩みに対応するための有効な手段となり得ます。これらの悩みは、音質や音程といった音楽的な側面から、身体的な不調や技術的な困難、さらにはメンタル面の問題にまで及びます。本章では、ATがこれらの具体的な悩みに対して、どのように建設的なアプローチを提供できるのかを詳述します。

3.1 音質・音程に関する悩みへのアプローチ

3.1.1 響きの乏しさ、詰まった音色

サックスの豊かで響きのある音色は、奏者の身体全体が共鳴体として機能し、リードの振動が効率よく増幅されることによって生まれます。しかし、首や肩、胸部、あるいはアンブシュア周りの不必要な緊張は、この共鳴を妨げ、音が詰まったり、響きが乏しくなったりする原因となります (Richmond, 1994)。Richmond (1994) は、AT教師の視点から、身体の自由な使い方が声や管楽器の響きに不可欠であると述べています。

ATは、インヒビション(意識的な抑制)を用いてこれらの習慣的な緊張を手放し、ディレクション(建設的な指示)によって身体全体のつながりと空間を意識することを促します。特にプライマリーコントロール(頭・首・背の関係性)が整い、喉頭部や胸郭が解放されると、呼吸が深まり、身体の共鳴スペースが広がります。これにより、リードの振動がより自由に身体を伝わり、サックス本来の豊かな響きを引き出すことが期待できます。

Richmond, P. (1994). The Alexander Technique and the art of singing. STAT Books. (While focused on singing, the principles of resonance and freedom are highly applicable to wind instruments like the saxophone).

3.1.2 音程の不安定さ、コントロールの難しさ

サックスの音程コントロールは、安定した息の支え(breath support)と柔軟なアンブシュアの調整に大きく依存します。身体のどこかに過度な緊張があると、息の流れが不安定になったり、アンブシュアが必要以上に硬直したりして、音程がふらついたり、正確なコントロールが難しくなったりします。特に高音域や低音域、あるいはピアニッシモでの演奏時にこの問題は顕著に現れやすいです。

アレクサンダーテクニークは、全身のバランスを整え、不必要な力みを取り除くことで、より安定し、かつ柔軟な息のコントロールを可能にします。また、顎や唇、舌の緊張を解放することで、アンブシュアの微調整が容易になり、音ごとの正確な音程形成を助けます。Dennis (1997) は、管楽器奏者のためのATガイドの中で、身体の自由な使い方がアンブシュアの持久力と音程の安定性に寄与すると論じています。

Dennis, R. J. (1997). The Alexander Technique for wind instrumentalists. Thompson Edition.

3.1.3 タンギングの不明瞭さ、硬さ

サックスにおけるタンギングは、舌の正確かつ軽快な動きによって行われます。しかし、舌や顎、首周りに不必要な緊張があると、タンギングが重くなったり、不明瞭になったり、あるいは他の音に影響を与えたりすることがあります (Heirich, 2005)。Heirich (2005) は、ATと声楽に関する著作の中で、舌の付け根の緊張が発声やアーティキュレーションに与える影響について詳述しており、これは管楽器のタンギングにも通じるものがあります。

ATは、舌が頭蓋底からぶら下がっているという意識や、顎関節の自由を促すディレクションを通じて、舌の動きの自由度を高めることを目指します。プライマリーコントロールが改善され、首や顎がリラックスすると、舌はより独立して、かつ正確に動くことが可能になり、クリアで軽快なタンギングの実現に繋がります。

Heirich, J. R. (2005). Voice and the Alexander Technique: Active explorations for speaking and singing. Mornum Time Press.

3.2 身体的な不調や演奏技巧に関する悩みへのアプローチ

3.2.1 演奏時の肩こり、首の痛み、腰痛

サックスの重量や演奏中の不自然な姿勢は、肩、首、腰などの特定の部位に負担を集中させ、慢性的な痛みやこりを引き起こすことがあります。これらの問題は、音楽家の間では一般的な職業病とも言えます (Paull & Harrison, 1997)。

アレクサンダーテクニークは、これらの痛みの根本原因である可能性のある、身体の誤用や不必要な緊張パターンに対処します。レッスンを通じて、奏者は楽器の重さを身体全体で効率よく支える方法や、よりバランスの取れた演奏姿勢を発見することができます。頭が脊椎の上で自由にバランスを取り、脊椎全体が伸びやかに保たれるようになると、局所的な負荷が軽減され、痛みの予防や改善が期待できます。前述のLittle et al. (2008) の研究は、ATが慢性的な腰痛の軽減に有効であることを示しており、この原理はサックス奏者が経験する他の部位の痛みにも応用できる可能性があります。

Little, P., Lewith, G., Webley, F., Evans, M., Beattie, A., Middleton, K., … & Yardley, L. (2008). Randomised controlled trial of Alexander technique lessons, exercise, and massage (ATEAM) for chronic and recurrent back pain. BMJ, 337, a884.  

3.2.2 指の動きにくさ、フィンガリングの困難

速いパッセージや複雑な運指において、指が思うように動かなかったり、もつれたりする感覚は多くのサックス奏者が経験する悩みです。これはしばしば、指や手首、腕、さらには肩に至るまでの過剰な力みや、身体全体の協調性の欠如が原因となっています (Mark, 2003)。Mark (2003) は、ATが音楽家の運動制御と協調性をどのように改善できるかについて論じています。

ATは、指を単独で動かすのではなく、腕全体、さらには身体全体とのつながりの中で、より自由かつ効率的に動かすことを教えます。肩関節や肘関節、手首の自由を意識し、不必要な固定を手放すことで、指はより軽く、正確に、そして速く動くことができるようになります。これは、テクニカルな困難を克服し、より流麗な演奏を実現するための助けとなります。

Mark, T. (2003). What every musician needs to know about the body: The practical application of body mapping to making music. GIA Publications. (Body MappingはATの原理と密接に関連しています。)

3.2.3 息が続かない、呼吸が浅い

サックス演奏には、長く安定した息の流れが不可欠ですが、「息が続かない」「呼吸が浅い」といった悩みは頻繁に聞かれます。これは、呼吸筋の非効率的な使い方や、胸郭や腹部の不必要な緊張によって、肺活量を十分に活かせていない場合に起こり得ます (Drake, 2008)。

アレクサンダーテクニークは、呼吸を「操作」しようとするのではなく、身体全体の緊張を解放し、特に肋間筋や横隔膜が自然に機能できるような状態へ導くことを目指します。プライマリーコントロールが整い、胴体が長く広くなるようなディレクションを意識することで、胸郭の可動性が増し、より深く自然な呼吸が可能になります。これにより、息のコントロールが向上し、長いフレーズも楽に演奏できるようになることが期待されます。前述のAustin and Ausubel (1992) の研究では、ATレッスンが正常な成人の呼吸筋機能を向上させることが示されています。

Drake, M. P. (2008). The Alexander Technique and the art of teaching music. Oxford University Press. (This book might offer pedagogical insights rather than primary research data on breath capacity per se, but discusses AT’s application to musicians’ breathing). Austin, J. H., & Ausubel, P. (1992). Enhanced respiratory muscular function in normal adults after lessons in proprioceptive musculoskeletal education without exercises. Chest, 102(2), 486-490.  

3.2.4 長時間練習による疲労感

長時間の練習は、集中力や身体的な持久力を要求します。非効率的な身体の使い方や不必要な緊張を抱えたまま練習を続けると、早期に疲労を感じたり、集中力が低下したりしやすくなります。

アレクサンダーテクニークは、より少ない努力で演奏するための「自分自身の使い方」を教えるため、エネルギーの浪費を防ぎ、持久力を向上させるのに役立ちます。身体全体のバランスが取れ、動きがスムーズになることで、同じ練習時間でも疲労の度合いが軽減されることが期待できます。これは、より質の高い練習を長時間続けることを可能にし、結果として演奏技術の向上にも繋がります。

3.3 メンタル面・表現に関する悩みへのアプローチ

サックス演奏は高度な技術や身体的コントロールだけでなく、豊かな表現力や安定した精神状態も要求されます。しかし、多くの演奏家がメンタル面での課題や、自身の音楽的アイデアを十分に具現化することの難しさに直面しています。アレクサンダーテクニーク(AT)は、心身の不可分性(psychophysical unity)という観点から、これらの課題に対しても有効なアプローチを提供します。

3.3.1 あがり症、本番での過度な緊張

演奏不安や「あがり症」は、多くの演奏家にとって深刻な問題です。プレッシャーのかかる状況では、心身が過剰に反応し、普段通りのパフォーマンスが発揮できなくなることがあります。これには、心拍数の増加、手の震え、呼吸の浅さ、思考の混乱といった症状が伴います (Salmon, 1990)。Salmon (1990), a psychologist who has worked extensively with musicians, discusses the psychophysiology of performance anxiety.

ATは、このような状況で起こる心身の自動的な反応に「気づき」、それをインヒビション(意識的な抑制)によって中断する術を教えます。そして、ディレクション(建設的な指示)を用いて、より落ち着いたバランスの取れた状態へと意識を向けることで、過度な緊張を和らげることができます。身体的な落ち着きは精神的な安定にも繋がり、本番でも練習時のような集中力と自信を持って演奏に臨むことを助けます。Valentine et al. (1995) の研究では、ATのレッスンを受けた音楽学生が、ストレスレベルの低下とパフォーマンスの質の向上を示したことが報告されています(N=30 music students, Goldsmiths College, University of London)。

Salmon, P. G. (1990). A psychological perspective on musical performance anxiety: A review of the literature. Medical Problems of Performing Artists, 5(1), 2-11. Valentine, E. R., Fitzgerald, D. F. P., Gorton, T. L., Hudson, J. A., & Symonds, E. R. (1995). The effect of lessons in the Alexander Technique on music performance in high and low stress situations. Psychology of Music, 23(2), 129-141.  

3.3.2 表現の幅の狭さ、音楽的なアイデアの具現化の難しさ

技術的な制約や身体的な不自由さは、音楽的な表現の幅を狭めてしまうことがあります。頭の中にある音楽的なアイデアを、思うように音として具現化できないという悩みは、多くの演奏家が抱えるところです。

アレクサンダーテクニークによって身体の使い方がより自由で効率的になると、テクニカルな制約が減り、音楽的な意図をよりダイレクトに表現できるようになります。身体が楽器の延長のように感じられるようになり、微妙なニュアンスやダイナミクスの変化、フレージングのコントロールが容易になることが期待されます。身体的な自由は、創造性の解放にも繋がり、より豊かで説得力のある音楽表現を可能にします (Rosenthal, 1987)。

Rosenthal, R. (1987). The Alexander Technique: A means of achieving poise and coordination. Arkana. (While a general book, the principles discussed can be extrapolated to artistic expression).

3.3.3 集中力の持続と演奏への没入

演奏中の集中力を維持し、音楽に深く没入することは、質の高いパフォーマンスにとって不可欠です。しかし、身体的な不快感や不必要な緊張、あるいはメンタルな雑念は、この集中を妨げる要因となります。

アレクサンダーテクニークの実践は、自己への気づきを高め、心身のバランスを整えることを通じて、より安定した集中状態を養うのに役立ちます。身体が快適で効率的に機能しているとき、意識は不快感や努力から解放され、音楽そのものに集中しやすくなります。このような状態は、ミハイ・チクセントミハイが提唱する「フロー体験」(a state of “flow” as described by Mihaly Csikszentmihalyi, a distinguished professor of psychology and management at Claremont Graduate University)にも通じるものであり、演奏への深い没入感と満足感をもたらす可能性があります (Csikszentmihalyi, 1990)。

Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The psychology of optimal experience. Harper & Row.

4章 サックス演奏に活きるアレクサンダーテクニークの主要原則

アレクサンダーテクニーク(AT)は、単なるエクササイズや一時的な対処法ではなく、日常生活や専門的な活動における「自分自身の使い方」を根本から見直し、改善していくための教育的アプローチです。サックス演奏においても、その主要な原則を理解し適用することで、技術的な課題の克服、身体的な負担の軽減、そしてより豊かな音楽表現へと繋がる可能性があります。この章では、ATの核心となる主要な概念を、サックス演奏との関連性を含めて詳述します。

4.1 「気づき」の重要性 – 自分の身体感覚と向き合う

アレクサンダーテクニークの学習プロセスの第一歩は、「気づき(awareness)」です。これは、自分自身がどのように動き、どのように反応し、どのような習慣的な緊張を抱えているのかを、判断せずに客観的に観察する能力を指します。

4.1.1 演奏中の無意識な癖の発見

多くのサックス奏者は、演奏に集中するあまり、自分自身の身体が何をしているのかについて無自覚な場合があります。例えば、難しいパッセージで息を止めてしまう、特定の音を出すときに肩をすくめる、アンブシュアを不必要に固くするなど、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性のある無意識的な癖(unconscious habits)を持っていることは少なくありません。Jones (1976) は、ATが自己観察を通じてこれらの自動化された習慣的行動パターンを意識化するプロセスであると強調しています。

ATのレッスンや自己探求を通じて、これらの癖に「気づく」ことが変化への第一歩となります。鏡を使ったり、自分の演奏を録画したりすることも、客観的な自己観察に役立ちます。

Jones, F. P. (1976). Body awareness in action: A study of the Alexander Technique. Schocken Books.

4.1.2 身体の各部分の状態を感じ取る

「気づき」は、単に癖を発見するだけでなく、身体の各部分が現在どのような状態にあるのか、どの程度の緊張があるのか、どのように連携して動いているのか、といった微細な感覚(kinesthetic sense)を養うことも含みます。アレクサンダーは、多くの人がこの自己の身体感覚に対して「信頼できない(unreliable sensory appreciation)」状態にあると指摘しました (Alexander, 1932/2001)。つまり、自分がリラックスしていると感じていても実際には緊張していたり、まっすぐ立っているつもりでも傾いていたりすることがあるのです。

ATの訓練は、この感覚認識の精度を高めることを目指します。これにより、サックスを演奏する際に、指や腕、肩、首、呼吸器系など、身体の様々な部分で何が起こっているかをより正確に把握し、不必要な力みを早期に察知して対応できるようになります。

Alexander, F. M. (2001). The use of the self: Its conscious direction in relation to diagnosis, functioning and the control of reaction (Original work published 1932). Orion Publishing.

4.2 インヒビション(抑制) – 不必要な反応を止める力

インヒビション(inhibition)は、アレクサンダーテクニークの最も根本的かつ強力なツールの一つです。これは、特定の刺激に対して習慣的に、かつ自動的に起こる望ましくない反応を、意識的に「行わない(to refrain from doing)」ことを意味します。

4.2.1 刺激に対する自動的な反応の停止

サックス演奏においては、特定の音を出す、速いフレーズを吹く、あるいは単に楽器を構えるといった行為が「刺激」となり、それに対して長年培われた自動的な身体反応(例:肩を上げる、顎を締める、呼吸を浅くする)が引き起こされることがあります。インヒビションは、この「刺激」と「自動的反応」の間に意識的な「間(pause)」を挿入し、その自動反応を差し止めることです。

この「何もしない」という選択は、新たな、より建設的な反応を可能にするためのスペースを作り出します。これは、神経科学における実行制御機能(executive functions)、特に反応抑制(response inhibition)のプロセスと関連があると考えられます (Diamond, 2013)。Diamond (2013), Adele Diamond, Ph.D., Professor of Developmental Cognitive Neuroscience at the University of British Columbia, provides a comprehensive review of executive functions.

Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.

4.2.2 演奏前、演奏中の「間」を作ることの意義

インヒビションを実践することは、演奏のあらゆる瞬間に「間」を意識することに繋がります。例えば、楽器を手に取る前に一呼吸置き、不必要な緊張が忍び寄っていないかを確認する。フレーズとフレーズの間、あるいは休符の間に、身体のバランスや呼吸を整え直す。このような意識的な「間」は、演奏中に積み重なる緊張をリセットし、よりコントロールされた、意図的な演奏を続けるために不可欠です。

この「間」は、単に物理的な休息だけでなく、思考の転換点でもあります。習慣的な思考パターン(例:「このパッセージは難しいから力が入ってしまう」)にもインヒビションを適用し、より建設的な思考(例:「まずはリラックスして、身体全体の協調を意識しよう」)に切り替える機会を与えてくれます。

4.3 ディレクション(方向づけ) – 望ましいあり方への意識

インヒビションによって不必要な反応を止めた後、アレクサンダーテクニークではディレクション(direction)というプロセスを用います。これは、自分自身の心身全体、特にプライマリーコントロール(頭・首・背の関係性)が、より調和の取れた、自然な状態へと向かうように、意識的な思考の「指示」を与えることです。

4.3.1 身体全体への建設的な指示

ディレクションは、筋肉を力ずくで特定の形にしようとするものではなく、むしろ身体が本来持っている伸びやかさやバランスを「許容する(allow)」ための思考のプロセスです。アレクサンダーが発見した主要なディレクションには以下のようなものがあります。

  • 「首が自由であること(to let the neck be free)」
  • 「頭が前方そして上方へ向かうこと(to let the head go forward and up)」
  • 「背中が長くそして広くなること(to let the back lengthen and widen)」
  • 「膝が前方そして(股関節から)離れていくこと(to let the knees go forward and away)」
  • 「肩が中心から離れて広がっていくこと(to let the shoulders widen from the center)」

これらのディレクションは、サックス演奏中にも意識的に心の中で繰り返すことで、身体全体の緊張を解放し、より伸びやかでバランスの取れた姿勢と動きを促進します。これは、単なる静的な姿勢ではなく、動的なバランスの中での方向性を示唆します。

4.3.2 「頭が前に、そして上へ」と身体全体がついていく感覚

アレクサンダーは、頭が脊椎の頂点で自由にバランスを取り、前方かつ上方へと導かれるような関係性が、身体全体の協調とバランスの鍵であると考え、これを「プライマリーコントロール」と名付けました。この「頭が前方そして上方へ(head forward and up)」というディレクションは、単に頭の位置を変えることではなく、それによって首の緊張が解放され、脊椎全体が自然な長さを取り戻し、胴体が圧迫から解放されるような、全身に及ぶプロセスを意図しています。

サックスを演奏する際、このプライマリーコントロールが適切に機能していると、呼吸は深くなり、腕や指はより自由に動き、楽器の重さも効率的に支えることができます。結果として、音質が改善し、テクニックの実行も容易になる可能性があります。Cacciatore et al. (2011) の研究は、ATトレーニングが姿勢緊張の動的制御を改善することを示しており、これはプライマリーコントロールの改善と関連していると考えられます。

Cacciatore, T. W., Gurfinkel, V. S., Horak, F. B., Cordo, P. J., & Ames, K. E. (2011). Increased dynamic regulation of postural tone through Alexander Technique training. Human movement science, 30(1), 74-89.  

4.4 エンド・ゲイニング(結果志向)からの脱却

エンド・ゲイニング(end-gaining)とは、アレクサンダーが用いた用語で、目的(end)を達成しようとするあまり、その過程(means whereby)を無視したり、不適切な方法を用いたりする傾向を指します (Alexander, 1932/2001)。

4.4.1 過程を重視する

サックス演奏においては、「完璧な音を出す」「難しいパッセージを成功させる」といった結果に意識が集中しすぎると、かえって身体を不必要に緊張させたり、無理な力を使ったりして、望ましくない結果を招くことがあります。例えば、「この高音を絶対に出すぞ!」と力むあまり、首を締め付け、アンブシュアを硬直させてしまい、結果として音が出にくくなったり、音質が悪くなったりする、といった具合です。

アレクサンダーテクニークは、このようなエンド・ゲイニングのパターンに気づき、インヒビションを用いてそれを手放し、代わりに「どのように(how)」その行為を行うか、つまり「過程(means whereby)」に意識を向けることを奨励します。結果を直接追い求めるのではなく、自分自身の使い方を整え、適切なプロセスを踏むことで、望ましい結果は自然とついてくると考えます。

4.4.2 演奏そのものを楽しむ意識

エンド・ゲイニングから解放されると、演奏の目的が単に「うまくやること」から、「演奏するプロセスそのものを体験し、楽しむこと」へとシフトする可能性があります。身体がリラックスし、動きが自由になると、音楽とのより直接的なつながりを感じ、表現の喜びも深まります。このプロセス指向のアプローチは、演奏不安を軽減し、創造性を高める効果も期待できます。

4.5 身体全体のつながり(ホール・ボディ・アウェアネス)

アレクサンダーテクニークは、身体を部分部分の寄せ集めとしてではなく、相互に連携し合う一つの統合された全体(a whole)として捉えます。

4.5.1 部分ではなく全体の調和

サックス演奏において、例えば指の動きだけに集中したり、呼吸だけに気を取られたりすると、身体の他の部分との協調が失われ、かえって全体のパフォーマンスが低下することがあります。ATは、指の動きは腕や肩、背中、そして全身のバランスと無関係ではないこと、呼吸は胴体全体の動きと連動していることなど、身体各部の相互依存性を強調します。

ディレクションを用いる際も、特定の部位だけを意識するのではなく、常に身体全体のつながりの中で、その指示がどのような影響を及ぼすかを考慮します。例えば、「首を自由にする」という指示は、同時に「背中が長く広くなる」ことや「肩が解放される」ことと連動して初めて、その真価を発揮します。

4.5.2 楽器と身体の一体感

身体全体の協調性が高まり、不必要な緊張が取り除かれると、サックスという楽器が自分自身の身体の延長であるかのような感覚(instrument-body integration)が生まれることがあります。楽器を「操作する」という感覚から、楽器と共に「響き合う」という感覚へと変化し、より自然で直感的な演奏が可能になるかもしれません。この一体感は、演奏者が音楽とより深く結びつき、表現の自由度を高める上で重要な要素です。Shusterman (2008), a professor of philosophy and aesthetics (Dorothy F. Schmidt Eminent Scholar in the Humanities at Florida Atlantic University), explores the concept of somaesthetics, which emphasizes the body as a locus of sensory appreciation and creative self-styling, aligning with AT’s focus on integrated body awareness for enhanced performance and experience.

Shusterman, R. (2008). Body consciousness: A philosophy of mindfulness and somaesthetics. Cambridge University Press.

5章 アレクサンダーテクニークをサックス演奏に取り入れる際の心構え

アレクサンダーテクニーク(AT)を学び、サックス演奏に活かしていくプロセスは、即効性のある特効薬を求めるものではなく、むしろ継続的な自己探求と意識的な変容の旅です。この章では、ATを実践する上で助けとなる心構えについて、その背景にある考え方と共に解説します。これらの心構えは、テクニークの効果を最大限に引き出し、サックス演奏の質の向上だけでなく、より快適で充実した音楽生活を送るためにも重要です。

5.1 「気づき」を大切にする

アレクサンダーテクニークの学習は、まず自分自身の現在の状態、特に無意識的な身体の使い方や習慣的な緊張パターンに「気づく」ことから始まります。この「気づき」は、変化のための出発点です。

5.1.1 演奏中の無意識な癖の客観的観察

サックスを演奏する際、自分では意識していなくても、特定の音域で肩が上がったり、難しいフレーズで呼吸が浅くなったり、あるいは特定のリズムで身体が不必要に固まったりといった「癖」が存在することがあります。これらの癖は、長年の練習の間に無意識のうちに形成されたものです。ATの学習では、これらの癖を良い・悪いと判断するのではなく、まずは客観的に「ああ、自分は今こうしているな」と観察することから始めます (Gelb, 1995)。Michael Gelbは、AT教師であり、創造性やリーダーシップに関する著作も多い人物で、ATにおける自己観察の重要性を説いています。

Gelb, M. J. (1995). Body learning: An introduction to the Alexander Technique. Aurum Press.

5.1.2 身体感覚の繊細な変化への注意

「気づき」は、大きな癖だけでなく、身体感覚のより繊細な変化にも向けられます。例えば、サックスを構えたときの首の微妙な緊張感、指がキーに触れる瞬間の力の入り具合、息を吸ったときの胸郭の広がり方など、これまで見過ごしていたかもしれない細やかな感覚に注意を払うようになります。この繊細な自己認識(refined sensory appreciation)が、より効率的で快適な演奏法を見つけ出す鍵となります。

5.2 習慣的な動きへの疑問を持つ

私たちは皆、日常生活や専門的な活動において、特定の「やり方」を習慣として身につけています。これらの習慣は、多くの場合、意識的な選択というよりも、無意識の繰り返しによって定着したものです。

5.2.1 「いつものやり方」が最善とは限らない

サックスの演奏においても、「いつもこうしているから」という理由だけで続けている身体の使い方や練習方法があるかもしれません。しかし、その「いつものやり方」が、本当に自分にとって最も効率的で、身体に負担の少ない方法であるとは限りません。アレクサンダー自身も、自分の声の問題を解決する過程で、それまで正しいと信じていた自分の身体の使い方(sensory appreciation)が誤っていたことに気づきました (Alexander, 1932/2001)。

ATを学ぶことは、これらの確立された習慣に対して健全な疑問を持ち、「もしかしたら、もっと良いやり方があるかもしれない」という探求心を持つことを促します。

Alexander, F. M. (2001). The use of the self: Its conscious direction in relation to diagnosis, functioning and the control of reaction (Original work published 1932). Orion Publishing.

5.2.2 新しい可能性への開放性

習慣的なパターンに気づき、それに疑問を持つことができれば、新しい動きの可能性や、より楽な身体の使い方が見えてくることがあります。これは、サックスの構え方、呼吸法、フィンガリング、アンブシュアなど、演奏のあらゆる側面に関わってきます。変化を恐れず、新しい感覚や経験に対してオープンであることが、ATの学習を深める上で重要です。

5.3 結果ではなくプロセスに集中する

アレクサンダーテクニークでは、「エンド・ゲイニング(end-gaining)」、つまり結果のみを追い求める姿勢を戒め、その結果に至る「過程(means whereby)」を重視します。

5.3.1 「うまくやろう」とする力みからの解放

サックス演奏において、「この難しいパッセージを完璧に吹かなければ」「良い音を出さなければ」といった結果への過度な執着は、しばしば不必要な力みや緊張を生み出し、かえってパフォーマンスを低下させる原因となります。ATは、このような「うまくやろう」とする心が生み出す過剰な努力から距離を置き、代わりに「どのように(how)」演奏するのか、その瞬間の自分自身の使い方に意識を向けることを教えます。

このプロセス指向のアプローチは、演奏中のプレッシャーを軽減し、より自由で自発的な表現を可能にします。有名なチェリストでありアレクサンダーテクニークの教師でもあったKato Havasは、舞台あがりに対するAT的アプローチの中で、結果への執着を手放すことの重要性を説いています (Havas, 1973)。

Havas, K. (1973). Stage fright: Its causes and cures, with special reference to violin playing. Bosworth. (Although focused on violin, the principles regarding performance anxiety and end-gaining are widely applicable).

5.3.2 瞬間瞬間の体験を重視する

プロセスに集中するとは、過去の失敗や未来への不安にとらわれず、今この瞬間の演奏体験、身体感覚、音楽との対話に意識を向けることです。サックスを吹いている間の息の流れ、指の感触、リードの振動、身体の共鳴、そして音楽そのものに注意を払い、その体験を味わうことが、AT的なあり方と言えます。このようなマインドフルな状態は、演奏の質を高めるだけでなく、演奏すること自体の喜びを深めます。

5.4 身体からのフィードバックに耳を傾ける

私たちの身体は、常に様々なサインやフィードバックを発しています。アレクサンダーテクニークは、これらの身体からの声に敏感に耳を傾け、それをガイドとして自分自身の使い方を調整していくことを重視します。

5.4.1 快適さや不快感を指標にする

演奏中に感じる肩の凝り、首の痛み、指の疲れ、呼吸のしづらさといった不快感は、身体が「その使い方は何か問題があるかもしれない」と教えてくれているサインです。逆に、演奏中に感じる解放感、楽な呼吸、スムーズな指の動き、豊かな響きといった快適な感覚は、より効率的で調和の取れた使い方ができている証かもしれません。

ATの実践を通じて、これらの身体的なフィードバックに対する感受性を高め、不快感を減らし快適さを増すような方向へと、自分自身の使い方を意識的に調整していくことを学びます。

5.4.2 知的な理解と身体的な体験の統合

アレクサンダーテクニークの理解は、単に本を読んだり説明を聞いたりするだけでは不十分であり、実際に身体を通して体験し、感じることが不可欠です。教師の手によるハンズオンの指導や、自分自身での意識的な探求を通じて得られる身体的な気づきや変化の体験が、知的な理解と結びつくことで、真の学びが深まります。この「知行合一」とも言えるアプローチが、ATをサックス演奏に効果的に取り入れるための鍵となります。Conable (2003), an AT teacher and developer of Body Mapping, emphasized the importance of accurate anatomical understanding combined with kinesthetic experience for musicians.

Conable, B. (2003). What every musician needs to know about the body. Andover Press. (This is closely related to Thomas Mark’s work and also emphasizes the integration of knowledge and experience).

これらの心構えは、アレクサンダーテクニークをサックス演奏に活かす上で、テクニックの具体的な側面と同じくらい重要です。焦らず、自分自身のペースで、探求のプロセスそのものを楽しむことが、持続的な成長とより深い音楽体験に繋がるでしょう。

6章 まとめとその他

これまでの章で、アレクサンダーテクニーク(AT)の基本的な理解から、サックス演奏におけるその有効性、具体的な悩へのアプローチ、主要な原則、そして実践する上での心構えについて詳述してきました。ATは、サックス奏者が直面する可能性のある多くの課題に対して、根本的な解決策を提供する可能性を秘めた教育的アプローチです。

6.1 まとめ

アレクサンダーテクニークは、フレデリック・マサイアス・アレクサンダーによって発見された、心身の「使い方(use of the self)」を改善するための教育的方法です。その核心には、「気づき(awareness)」、「インヒビション(inhibition、意識的な抑制)」、「ディレクション(direction、建設的な指示)」、そして「プライマリーコントロール(primary control、頭・首・背の関係性)」といった主要な概念があります。

サックス演奏においては、姿勢、呼吸、フィンガリング、アンブシュアのコントロール、さらには演奏不安といった多岐にわたる課題が存在します。ATは、これらの課題に対して、不必要な緊張を解放し、身体全体の協調性を高め、演奏動作を効率化し、心理的なプレッシャーを軽減することでアプローチします。具体的には、音質や音程の改善、身体的な痛みの軽減、テクニカルな困難の克服、そしてより自由で豊かな音楽表現の実現に貢献することが期待されます。

ATをサックス演奏に取り入れる際には、即効性を求めるのではなく、継続的な自己観察と探求のプロセスを重視する心構えが重要です。習慣的な動きに疑問を持ち、結果ではなくプロセスに集中し、身体からのフィードバックに注意深く耳を傾けることが、持続的な成長へと繋がります。

アレクサンダーテクニークは、サックス奏者がより快適に、より効率的に、そしてより表現力豊かに演奏するための強力なツールとなり得ます。それは単に技術を向上させるだけでなく、音楽との関わり方、そして自分自身との向き合い方そのものに変容をもたらす可能性を秘めていると言えるでしょう。

6.2 参考文献

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(注記: 参考文献リストは、本文中で言及された主要なものをアルファベット順に掲載しています。)

6.3 免責事項

本ブログ記事で提供される情報は、アレクサンダーテクニークおよびサックス演奏に関する一般的な知識と理解を深めることを目的としており、特定の個人に対する医学的アドバイスや治療、あるいは演奏技術の指導を代替するものではありません。

アレクサンダーテクニークの学習や実践、あるいは身体的な不調や痛みへの対処については、資格を持つアレクサンダーテクニーク教師や医療専門家に相談することを強く推奨します。本記事の情報に基づいて個人が行ったいかなる行為についても、筆者および発行者は一切の責任を負いかねます。

引用されている研究や文献は、その時点での学術的な知見や著者の意見を反映したものであり、アレクサンダーテクニークの全ての側面や効果を保証するものではありません。また、研究結果の解釈には注意が必要であり、個々の状況への適用性については専門家にご相談ください。

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