声を大きくしようとしていませんか?|頑張って声を出すほど、声が出しにくくなる理由

「声が小さいと言われる」

「相手に聞こえるように、つい声を張ってしまう」

「大きな声を出そうとすると、喉が苦しくなる」

「人前に立つと、普段より声が小さくなってしまう」

そんなことはありませんか?

声が小さいと感じると、多くの場合、

「もっと大きな声を出さなきゃ」

と考えます。

そして、胸を張ったり、お腹に力を入れたり、喉を開こうとしたりして、声を頑張って出そうとします。

ところが、不思議なことに、頑張って声を大きくしようとするほど、声が出しにくくなることがあります。

なぜでしょうか。

今回は、「声量を上げる方法」ではなく、声を大きくしようとしているとき、自分の身体で何が起こっているのかという視点から考えてみましょう。

目次
  1. 第1章 「もっと大きな声を」と思うと、身体はどうなる?
  2. 第2章 声を大きくしようとすると、なぜ力みやすいの?
  3. 第3章 まず、自分の「大きな声」を観察してみよう
  4. 第4章 「喉を開けば、大きな声が出る」とは限らない
  5. 第5章 「大きな声」を出すために、身体を固めていませんか?
  6. 第6章 「声を大きくする」前に、できること
  7. 第7章 アレクサンダーテクニークから考える「声の大きさ」
  8. 第8章 「大きな声」を頑張らずに、もう一度話してみよう
  9. 第9章 まとめ|声を大きくする前に、「何をしているか」に気づく
  10. 免責事項
  11. 参考文献

第1章 「もっと大きな声を」と思うと、身体はどうなる?

1.1 声が小さいと、身体全体で頑張ろうとする

例えば、相手から、

「もう少し大きな声でお願いします」

と言われたとします。

すると次に話すとき、

「大きな声を出そう」

と意識しますよね。

その瞬間、胸を張る。

お腹に力を入れる。

肩を持ち上げる。

首を固める。

喉をしっかり開こうとする。

そんなことが起こっていないでしょうか。

もちろん、全員に同じ反応が起こるわけではありません。

ただ、「声を大きくする」という目的のために、声だけではなく身体全体に余計な力が加わることはあります。

1.2 「大きな声」と「強い力」は同じではありません

ここで一度、分けて考えてみましょう。

大きな声を出すことと、
身体に強い力を入れることは、同じではありません。

声を大きくするために必要な活動はあります。

しかし、

「もっと声を出さなければ」

という思いから身体を固めることまで必要とは限りません。

この違いに気づくことが、今回のポイントです。

第2章 声を大きくしようとすると、なぜ力みやすいの?

2.1 「届かせたい」という気持ちが身体を変える

声を大きくする場面には、目的があります。

「相手に聞いてほしい」

「後ろの人にも聞こえてほしい」

「人前でしっかり話したい」

「自信を持って話したい」

こうした気持ちは自然なものです。

ただ、その目的を達成しようとして、

「もっと頑張らなければ」

となると、身体の使い方も変わってきます。

例えば、相手に声を届けようとして、頭を前に突き出したり、胸を張ったり、喉や顎を固めたりすることがあります。

本人としては「声を出している」だけなのに、実際には身体全体でかなり頑張っているかもしれません。

2.2 声の「努力感」と身体の使い方は分けて考える

声を出すときに「頑張っている感じ」があること自体が、必ずしも悪いわけではありません。

例えば、舞台や広い場所で声を届けるには、普段とは違った発声が必要になることがあります。

重要なのは、

「頑張っている感覚がある=正しく声が出ている」

とは限らないことです。

2024年の研究でも、発声時の「努力感」と、筋緊張性発声障害に関連する生理的・音響的特徴との関係が調べられています。声を出すときの努力感は、単純に「声の大きさ」だけでは説明できない複雑な要素です。[1]

第3章 まず、自分の「大きな声」を観察してみよう

ここからは、実際に試してみましょう。

3.1 普通の声で「こんにちは」と言ってみる

まず、自然な声で、

「こんにちは」

と言ってみてください。

特別に声を大きくする必要はありません。

言ったあと、

首はどうなっているでしょうか?

肩は?

顎は?

胸やお腹は?

呼吸は止まっていないでしょうか?

ここでは、何も直さなくて大丈夫です。

ただ観察します。

3.2 今度は「もっと大きな声で」と思って言ってみる

次に、

「相手にしっかり聞こえるように、もっと大きな声で」

と思って、「こんにちは」と言ってみます。

どうでしょうか?

声の大きさだけでなく、身体にも変化がありませんでしたか?

肩が少し上がった。

胸を張った。

お腹を固めた。

顎に力が入った。

喉を押し広げようとした。

あるいは、何も変わらなかったかもしれません。

どちらでも構いません。

大切なのは、

「声を大きくしようとすると、自分は何をしているのか」

に気づくことです。

第4章 「喉を開けば、大きな声が出る」とは限らない

4.1 喉をどうにかしようとしすぎない

声が小さいと、

「喉が閉じているのかな?」

「もっと喉を開かなきゃ」

と考えることがあります。

そして、喉を開こうとして、顎を下げたり、首を伸ばしたり、口を大きく開いたりする。

でも、「喉を開く」という感覚を作ろうとすることで、かえって余計な力が入る場合もあります。

大切なのは、「正しい喉の形」を一生懸命作ることではありません。

声を出しているとき、自分がどんな使い方をしているのかを見ること。

そこから始めてみます。

4.2 声は喉だけで出しているわけではない

私たちが話すときには、呼吸、声帯、舌、唇、顎など、さまざまな身体の働きが関わります。

さらに、話す前には姿勢を変えたり、相手に注意を向けたり、言葉を考えたりしています。

つまり、

「声を出す」という行為は、身体全体を使った活動です。

だからこそ、声だけを一生懸命変えようとするのではなく、「声を出している自分全体」を観察することができます。

第5章 「大きな声」を出すために、身体を固めていませんか?

5.1 もう一度、「こんにちは」と言ってみる

では、もう一度やってみましょう。

今回は、

「大きな声を出そう」

とも、

「力を抜こう」

とも考えません。

ただ、

「相手に声が届く」

ことを意識して、「こんにちは」と言ってみます。

そのとき、自分の身体がどう動いているかに気づいてみてください。

肩を固めなくても声が出る。

顎を固定しなくても言葉が出る。

胸を張らなくても相手に届く。

そんな可能性があるかもしれません。

5.2 「直す」のではなく、違いを知る

ここでも、正解を探す必要はありません。

「こっちの声が正しい」

と決める必要もありません。

最初の「もっと大きな声を出そう」としたときと、今の声。

身体の使い方に違いがあるかどうか。

それを知るだけでも十分です。

アレクサンダーテクニークでは、こうした自分の使い方への気づきを大切にします。

第6章 「声を大きくする」前に、できること

6.1 声量ではなく、まず身体を観察する

声が小さいと感じたとき、すぐに発声方法を変えようとするのではなく、

「今、私はどうやって声を出そうとしているんだろう?」

と一度観察してみましょう。

例えば、

  • 声を出す前に身体を固めている
  • 首を前に出している
  • 肩を持ち上げている
  • 顎を固定している
  • 息を止めてから声を出している
  • 声を押し出そうとしている

など。

もちろん、これらが必ず悪いという意味ではありません。

重要なのは、自分にそうした習慣があることに気づくことです。

6.2 「もっと頑張る」以外の選択肢を持つ

「声が小さい」

↓

「もっと大きな声を出そう」

↓

「身体に力を入れる」

↓

「喉が苦しくなる」

↓

「さらに頑張って声を出す」

このような循環になっているとしたら、一度そこで止まってみます。

「もっと頑張る」以外にも、

「今の自分の使い方を観察する」

という選択肢があります。

第7章 アレクサンダーテクニークから考える「声の大きさ」

7.1 声を変える前に、自分の使い方を見る

アレクサンダーテクニークでは、

「大きな声を出すための正しい姿勢」

を一つ覚えることを目的にはしません。

声を出す、話す、立つ、座るといった実際の活動の中で、

自分が何をしているのかに気づいていく

ことを大切にします。

例えば、

「声を大きくしよう」

と思った瞬間に首を固めていたとしたら、そのことに気づく。

そして、

「首を固めないようにしなきゃ」

と新たに頑張るのではなく、

そのまま身体の使い方を観察してみる。

そこから、今までとは違う選択肢を探していきます。

7.2 「声を大きくする自分」ではなく、「話している自分」に気づく

声の問題を考えるとき、私たちは声だけに注目しがちです。

でも、

「声を大きくしようとしている自分」

「相手に届けようとしている自分」

「人前で話している自分」

全体を見ると、違ったものが見えてくることがあります。

アレクサンダーテクニークに関する研究では、音楽家を対象とした系統的レビューで、演奏不安への効果を示す研究がある一方、姿勢や呼吸機能、演奏パフォーマンスについては一貫した結論には至っていません。[2]

そのため、アレクサンダーテクニークを特定の声の症状を治療する方法としてではなく、身体の使い方に気づき、活動中の自分を観察する学習方法の一つとして捉えることが大切です。

第8章 「大きな声」を頑張らずに、もう一度話してみよう

最後に、もう一度だけ試してみましょう。

まず、普段どおりの声で一言話します。

次に、意図的に「もっと大きな声を出そう」として話します。

そして、そのときの身体を観察します。

首は?

肩は?

顎は?

胸は?

お腹は?

呼吸は?

そして最後に、

「大きな声を出そう」と頑張ることも、「力を抜こう」と頑張ることもせず、相手に声を届けることだけを考えて話してみます。

何か違いはありましたか?

声が大きくなったかどうかだけを見る必要はありません。

「身体が少し自由だった」

「喉を頑張らなくても話せた」

「意外と身体を固めていた」

そんな発見があれば、それが大切な一歩です。

第9章 まとめ|声を大きくする前に、「何をしているか」に気づく

声が小さいと、

「もっと大きな声を出さなきゃ」

と思うのは自然なことです。

しかし、

声の大きさと、身体に入れる力の大きさは同じではありません。

声を大きくしようとしたとき、

  • 首を固める
  • 肩を持ち上げる
  • 顎を固定する
  • 胸やお腹を固める
  • 喉を押し広げようとする

など、自分でも気づかない身体の使い方が加わっているかもしれません。

だからこそ、

「どうすれば大きな声が出るか?」

だけではなく、

「大きな声を出そうとするとき、私は何をしているか?」

という問いを持ってみてください。

声を無理に変えるのではなく、声を出している自分自身を観察する。

その視点を持つことで、「もっと頑張る」以外の可能性が見えてくることがあります。

アレクサンダーテクニークのレッスンでは、話す・立つ・座るなどの実際の活動を通して、自分自身の身体の使い方を観察していきます。

声を変えようとする前に、声を出している自分に気づいてみる。

そこから、一緒に探していくことができます。

免責事項

この記事は、アレクサンダーテクニークの考え方や身体の使い方について紹介するものであり、医学的な診断や治療を行うものではありません。

声のかすれ、喉の痛み、声が出しにくい状態などが続く場合や、急激な声の変化がある場合は、自己判断で対処せず、耳鼻咽喉科などの医療機関にご相談ください。

また、アレクサンダーテクニークが特定の声の症状を治療・改善することを保証するものではありません。

参考文献

  1. Toles LE, Shembel AC. Acoustic and Physiologic Correlates of Vocal Effort in Individuals With and Without Primary Muscle Tension Dysphonia. American Journal of Speech-Language Pathology. 2024;33(1):237–247. PMID: 37931092.
  2. Klein SD, Bayard C, Wolf U. The Alexander Technique and musicians: a systematic review of controlled trials. BMC Complementary and Alternative Medicine. 2014;14:414. PMID: 25344325.
  3. Van Houtte E, Van Lierde K, Claeys S. Pathophysiology and treatment of muscle tension dysphonia: a review of the current knowledge. Journal of Voice. 2011;25(2):202–207. PMID: 20400263.
  4. Pereira GC, Lemos IO, Gadenz CD, Cassol M. Effects of Voice Therapy on Muscle Tension Dysphonia: A Systematic Literature Review. Journal of Voice. 2018;32(5):546–552. PMID: 28739332.
ブログ

BLOG

PAGE TOP